母目線で綴る愛

遅くなりましたが、カラフト伯父さんお疲れさま記念。グローブ座に行ってきました。

作品としては、唐突感が凄くて理解できないところが多々ありました。でも私が舞台を見るといつもそんな感じの印象を抱くので、単に私の読み解く能力が欠如しているという感は否めません。

徹くんと伯父さん

徹くんは震災で絶望を経験し、実父の言う本当の幸せだけを心の拠り所にして生きていました。でも彼の周囲では悲しい事ばかり起きるし、伯父さん(実父)はいつまで経っても来ない。そうして凝り固まった心を持て余して一人寂しく神戸で暮らす徹くん。

そんな中、急に現れて父親ぶりだす伯父さん。もちろん徹くんは困惑し、拒絶します。それでも伯父さんは徹くんを心配し、心を開いてくれない理由を問い質します。
そしてこれまでの苦しみを伯父さんにぶつけ、絶望を叫ぶ徹くん。

そんな徹くんに向かって伯父さんが叫びます。「カラフト伯父さん、ただいま戻りました!」伯父さんは一旦東京に戻るけど、そこで人生を清算し必ずここに戻ることを徹くんと約束します。そして二人は新たな道を歩み出すことを決めたのでした。完。


これ、ほんとに戻ってくる?

この辺が理解し難い。徹くんは長年伯父さんの言葉に囚われて、何度も何度も(子供の勝手な言い分かもだけど)裏切られてて。相当な絶望を味わったと思うんです。
それでもこの伯父さんの言葉で全て許す気になる?私だったらちょっとなー。

だから、伯父さんがどうこうというより、最後のあの徹くんの叫び自体が彼にとって必要な事だったのかなと思いました。

震災があって、母親と義理の父親は苦労してて、そんな環境で徹くんは自分の寂しさや悲しさを吐き出す事が出来ないまま中途半端に大人になってしまった。
うまく感情をコントロールする術も学べなかったせいで、頑なに伯父さんを拒んで心を守ることしかできなかった。

そんな中、ああやって自分の負の感情を叫んで当たり散らす事は、子供だった自分との決別に必要なことだったのかなと思います。大人になるために必要な、自分の幼稚さとの対面。
と、思うことで納得しました。

伊野尾くん

もう本当伊野尾くんの強さを実感する舞台でした。
伊野尾くんの演じる徹くんは、上記の通り伯父さんに敵意をむき出しにしたり苦痛を叫んだりします。
伊野尾くんは温和でちょっと掴めない人です。そのキャラクターはJr.の頃からあまり変わらないし、多分素の彼もそんなに大きく変わらないんじゃないかと思います。
そんな伊野尾くんにとって、激昂する行為自体慣れているものではないだろうし、徹くんはすぐに共感できる人ではなかったことが想像できて。

でも、汗だくで声を枯らせて叫ぶ伊野尾くんに、私は間違いなく心を動かされました。
カーテンコールで微笑んで小さく手を振るいつもの伊野尾くんにほっとしたくらいです。
この舞台に立つために、きっとたくさんの知識を吸収したり演技を学んだり、何より役への理解を得るために努力したことを、伊野尾くんの姿から感じました。

演技としてはもっともっと上手くなれると思いました(個人の感想です)。
でも、表には出さない芯の強さや誠実さ、そういうものを垣間見れてとても嬉しかったです。
しなやかに真面目に、プレッシャーに折れずにたくさんのものを吸収できる伊野尾くんはきっとかっこいい大人になる。今まさに成長している伊野尾くんをもっと見ていきたくなりました。


しかしドラマやったりシングルでソロパートあったりリトラでの活躍だったり、凄まじい躍進ですね。輝け伊野尾くん。